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Report Vol.14
2006/09/22
−日本スポーツ精神医学会−

スポーツ心理学というと「メンタルトレーニング」などを連想される方が多いかと思いますが、それはごくごく一部の領域に過ぎません。

スポーツ現場では年々うつ病の選手が増加しているという報告もあります。また、怪我から復帰するまでの道のりではさまざまな心理的変化があります。北米においてはアスレティックに力を入れている大学では、スポーツサイコロジスト(スポーツ心理学者)が配置されコーチ、トレーナーなどと連携しそのような問題に対応していると聞きます。

日本においてもようやく様々な学会や研究会でそのようなスポーツ心理学に関する研究が報告されています。今月千葉で開催された「日本スポーツ精神医学会」に参加した下農氏にレポートしていただきました。


9月2日に千葉県の(財)海外職業訓練協会で行われた,第4回「日本スポーツ精神医学会」総会・学術集会に参加してきました。日本スポーツ精神医学会は2003年の9月に創設学会が行われ、今回の総会・学術集会が4回目という創設間もない新しい学会です。

スポーツ精神医学会の研究の方向は@スポーツの精神医学への応用、A精神医学のスポーツへの応用、B身体運動と脳機能の基礎的な研究、これら3つに有機的な相互の関係をもたせながらスポーツと精神医学の関係を包括的に捉える医学分野にする(学会ウェブサイトより)、とされています。精神医学(psychiatry)とは、(1)脳の働きの異常が主として精神の働きの異常という形で現れた疾患、(2)脳と社会環境との相互作用の結果として、感情や情動や性格といった脳が作り出す心理的事象が本来もつ社会に適応していくための調節的機能が障害された状態、(3)脳が周囲環境から機械的・物質的影響を受けた結果、精神の働きを含む脳の機能が障害された状態を対象とする。精神医学は上記(1)〜(3)の疾患や障害の原因や病態を明らかにし、このような疾患や障害を促進したり抑制したりする社会環境要因を調べ、さらに、中枢神経系に作用する薬物を用いたり、個人の心理に働きかけたり、社会環境要因を調節したりして、疾患や障害の治療方法を開発し治療方法の奏効機序や治癒機転を明らかにする学問である(有斐閣 心理学辞典) 。最近、臨床スポーツ医学(文光堂)でも「スポーツ精神医学の今」という連載(休載中?)がされていました。スポーツ心理学を専攻している私にも興味深い学会・トピックスであるので、この度の学会参加となったわけです。

学会は開会挨拶の後、一般演題9題の発表が休みなく行われました。セッション1ではスポーツの精神医学への応用というテーマで、精神障害者への生活習慣改善プログラムの実例紹介や競技スポーツを行っている統合失調症患者の薬物療法に対する、患者自身へのアンケート調査などの発表がありました。セッション2では精神医学のスポーツへの応用というテーマで発表が行われました。特に、OTS(オーバートレーニング症候群)と判断されたために、精神科受診が遅れたうつ病の大学生競技選手の症例紹介が非常に興味深い内容でした。一般演題の後は会長講演、ランチョンセミナー、総会と続きました。その後、大阪ガス所属 アテネオリンピック陸上競技代表の朝原宣治選手の特別講演がありました。「アスリートと心理」というテーマでご自身の経験をお話いただきました。シンポジウムでは「アスリートを取り巻く苦悩 ?スポーツ精神医学に望まれること-」というテーマで4人のシンポジスト(スポーツ心理学専門家、アスレティックトレーナー、整形外科Dr、内科Dr)がお話をいただきました。

アメリカではスポーツ心理学の専門家・アスレティックトレーナー・コーチがしっかりとしたネットワークで結ばれ、必要な選手はすぐに精神科医の診断を受けるようなシステムが構築されているようです。日本では精神科医の受診・薬物療法に対する誤解や偏見が根強い、という点での日米の違いには驚きました。シンポジストの先生方から、「精神科医の先生がスポーツ現場」に近づいてきて欲しい、との提言がありましたが、フロアの方からは逆に「スポーツ現場が精神科医に近づけるようなコーディネーターの存在が必要」とのコメントもありました。やはりどちらが先に、という議論ではなく、お互いの歩み寄りが何より求められているのだと思います。シンポジウムでも述べられていましたが、現在の日本競技スポーツは競技レベルに関わらず、選手の心理面へのサポートは実際的に不十分であり、それに対する認識も希薄です。現場のコーチやアスレティックトレーナーが選手の心理面に関しての認識を変えていくことが求められているのだと思います。

下農 裕久

筑波大学大学院 体育研究科 体育心理学研究室
筑波大学ラグビー部トレーナー
ラグビーU-19日本代表フィットネス&コンディショニングコーチ


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