Home | Introduction | Report | Column | Think | Knowledge | Links | Contact
Column Vol.29
Yasuhisa Shimono
 ラグビーU19世界大会で感じた文化の違い

下農 裕久

筑波大学大学院 体育研究科 体育心理学研究室
筑波大学ラグビー部トレーナー
ラグビーU-19日本代表フィットネス&コンディショニングコーチ



今回は、Vol 27, 28に引き続き、IRB U19世界選手権大会2006で感じた「世界」との違いに関してお話してみたいと思います。

この大会では、全24チームが2つのオリンピックでいう選手村のような施設に分かれて滞在し、大会を戦いました。日本は、ニュージーランドやイングランド、ウェールズ、トンガ、南アフリカ共和国、フランス、アルゼンチン 他多数の強豪国と同じ施設に滞在しました。同じ施設内のプールやトレーニングルームを使用しますし、グラウンドも同じものを使用します。先方の許可さえ取れば(ほとんど必要なかったですが)練習も見学することができました。

ある日、フランスチームが試合日にも関わらず、午前中にかなり激しいスプリントトレーニングを行っていました。初めは「試合に出ない選手のトレーニングだろうか」と思っていましたが、人数を数えてみるとどうもそうではないようで、全ての選手がトレーニングしていました。その日は気温も高かったですし、試合の日にこのようなトレーニングをすることには、あまりメリットが感じられないでいました。後日、フランスのドクターやフィジオとディスカッションをする機会があり、「なぜ、試合の日に強度の高いスプリントトレーニングをしていたのか?」と聞いてみました。すると、フィジオは「Wake up!」と言いました。「他に意味があるでしょう?」と改めて聞いても、笑いながら「Only wake up」と言います。もしかしたら、僕の知らない何か別の理由があるのかもしれませんが、非常に興味深い光景でしたし、日本ではあまりない発想ですね。
南アフリカ共和国は朝食前に毎日、グラウンドで軽く練習をしてから朝食を食べにきていました。これも恐らく「Wake up」の目的で行われていたと思います。また、南アフリカ共和国は施設内の小さなプールにとてつもない量の氷を入れて、練習後に冷水浴を行っていました。日本の選手が一度、そのプールに入ったことがありましたが、「今まで感じたことのない冷たさと、というより痛み」という風に言っていました。南アフリカ共和国の選手は下半身だけでなく、全身浸かっていました。

今大会準優勝のNZと予選リーグで同グループだったので、練習を見ようとするとコーチから「練習を見るな!」と怒られました。ルーマニアに勝ったあとですし、強豪のNZも日本をきちんと対戦相手と認めてくれているようで、嬉しく感じたことを覚えています。日本の高校や大学はNZに遠征することも多く、練習試合やイベントで試合をしたことがある選手がいたようで、日本の選手もNZの選手とはよくコミュニケーションを取っていました。NZとの試合の後、試合は大敗だったのですが、プールリカバリーでNZと同じになりました。そこで、日本は最初フリーにしていたのですが、日本の選手が勝手に(!!)NZのプールリカバリーに紛れ込んでしまいました。それをきっかけに、日本の選手とNZの選手が入り乱れてのプールセッションとなりました。セッションの途中で私がNZのフィットネスコーチに謝りに行きました。でも、NZのコーチは満面の笑みで「No Probrem!!Very fine!」と言ってくれたのです。セッション後、プールの中で思い切り遊んでいる両チームの選手を色々な思いで見ていました。きっと、NZは日本と本気で戦ってくれたのでしょう。スコアは圧倒的に大敗でしたが、日本の低いタックルや諦めない姿勢、NZからのドロップゴールによる先取点、そして後半に生まれたトライ、NZが日本を認めてくれたのではないかと思います。だからこそ、選手もスタッフも日本を暖かく、歓迎してくれたのではないでしょうか。次戦のスコットランド戦にも日本は大敗でしたが、試合の後、宿舎ですれ違うNZの選手・スタッフから「試合どうだった??」と尋ねられました。「負けた…」と言うと、ものすごく残念がってくれました。「次は頑張れよ!」と優しく声をかけてくれるのです。本当に嬉しかったです。そのようなNZの選手・スタッフの姿勢から私だけでなく、日本の選手も何かを感じていたようです。マネジメントスタッフが選手に「強いチームほど優しいだろ?」という問いかけがとても印象的でした。

この大会のように、若い世代がどんどん世界の強豪と戦い、触れ合っていくことは素晴らしいことであると感じました。サッカーだけでなく、多くの競技で海外に挑戦するような若い選手が増えていく日を思うとワクワクします。

この年代で様々な国の選手と交流することが
将来のプレーの幅を広げることになるでしょう



>>大会公式ウェブサイト
>>日本ラグビー協会のリポート



<<column